ONKAI Philosophy
空間を図り定義しようとする私達の原動力について
美術と音楽に共通する主題は自然と空間です。
ONKAIは感覚的な学びを促す彫刻であり、陰旋法と陽旋法という日本の伝統的な2つの五音音階が可視化され、空間化されたものです。
低周波つまり低い音ほど高い音(高周波)に比べて大きな空間を必要とします。その結果として、音階に合わせて高さの異なる10の円筒の形ができました。
私たちは彫刻のなかに入り、触れ、演奏することを通じて、その空間がもつ振動数に気づき、空間の特性をよく理解するようになるのです。
陰旋法と陽旋法はそれぞれ「陰」(月)と「陽」(太陽)を象徴します。ONKAIではこのふたつの象徴が融合しています。
円筒群は繋がっており、通り抜けながら一周できます。
比喩的にいえば、この円筒を移動することは、夜から昼へ、そして再び夜へ、そして昼へ・・・といった循環の旅へと誘われるのです。
ONKAIのそばに山から流れ落ちる小川があります。
せせらぎの音は流量と気象条件によって左右されます。絶え間ない小川のささやきが常に各音響室(円筒)に微かに届いています。
彫刻そのものは音を発していませんが、その空間の固有の基本周波数と同調しながら、室内で繊細な響きを奏でているのです。
せせらぎの音が調律されているといってもいいでしょう。
さらに小川の背後の森を吹き抜けるそよ風のざわめきが、この素晴らしい場所をいっそう豊かな感覚体験の場としています。
ONKAIはかつての田んぼのなかに配置されました。見上げると棚田は見事な石垣にまもられ上昇しています。
作品のコンセプトそのものといってよいでしょうーたまたまここに決まったのでしたが、幸運な偶然でした。棚田は人為的であり、そういう意味では自然と人工を媒介しているようにも見えます。
ONKAIの横手の細い道は樹々の間を縫って森へと続き、竹筒神社へと至ります。神社は熊野古道全域と同様に霊的な空気を保ち、ONKAIに瞑想や内省の要素を加えています。ONKAI制作時には、私は毎日この神社を訪れるのが日課でした。
空間を測り定義しようと動機づけるものは何でしょうか?
それは自然で根源的な欲求ですが、内省や問いかけの衝動と表裏一体の関係にあります。
音は自然の現象であり、自然の法則に従っています。それらに対する体系的な研究と創造的なアプローチが、ONKAIの理念を生んでいったのです。
エコーのように、音は距離を測ることができます。
音源が音の波を発生させ、空間の寸法と特性を反映して音響的な場を作ります。
また音は時間に完全に依存しています。つまり音を媒介として時間と空間、持続と距離が結びつけられているのです。
私たちにはとても敏感な感覚器官、すなわち聴覚が備わっています。音の直接的な精神的影響を過小評価すべきではありません。
外部要素に対して耳を塞ぐことはできず、いわば恒常的に「受信」モードにあります。我々は優れた聴き手であるべきなのですが、常にそうとは限らず、注意深く聴くには意識的な努力が必要となります。
危険が差し迫ると、必ず耳を澄ましますが、その時にどれほど遠くまで聞こえ、聴覚的知覚が研ぎ澄まされるか、驚くべきものがあります。
聴覚と視覚の統合も起こります。日常生活の素材を視覚的・身体的・聴覚的に知覚することで芸術的意識を喚起します。
例えば都市環境と自然環境を実験室として扱うとしましょう。社会に対する開かれた批判的視点を伴いながら、特に私的空間と公共空間に関する議論のなかで、即座に次のような疑問が提起されます。公共空間は誰のものかという問いです。
アイデンティティと地域性という重要な問題を見据えるならば、この場所は自由な表現の場として機能しているか?
そのコミュニティが被った結果を誰がどのように対処するのか?確かに公共空間は民主主義の価値が無政府状態に近い形で現れる場です。
したがって、それは芸術と生活の相互関係と言い換えてもよく、そこでは共有された空間において地域社会が形成されるのです。
公共空間における恒久作品の作者としての経験から、これらは様々な国で展開され、年中無休・24時間アクセス可能な形で計画されているー
私は様々な反応やコメント、質問を受け取ります。
この現実は、作品が恒常的に使用され、多様な表現による介入が絶えず行われていることを想起させます。
それにより創造性が喚起され、教育的で参加型となるよう意図した作品が、現場で生まれる提案と共に実現されてゆくのです。
共有空間における音響彫刻の介入や作品実施のための分析・計画・実践の方法論は、その場所が持つ音響の本質を表現または明らかにしたいという願望に基づき、その場所が生み出すニーズを特定することから始まります。
提案に関わる全てのステークホルダーは、作品との社会的・参加型相互作用を生み出す上で鍵となる存在です。
加えて、作品の規模と適切な物質性を決定するため、現地の社会的・文化的環境ならびに環境の状況調査が必要となります。
大切にされる共有空間の領域には、今後達成すべきこと、表現すべきこと、革新すべきことが数多く残されています! ONKAIはコミュニティが集い、社会形成の基盤が築かれる重要な場所であり、社会的彫刻という芸術的実践を要請する場なのです。
したがって、これは空間の聴覚化と、逆に音の空間化という領域において、相互的かつ創造的な価値をもって共同性を構築するための横断的な一歩を踏み出す構想になっているといってよいでしょう。
ONKAIが聴覚的な彫刻といわれる所以です。
Lukas Kühne
ルーカス・キューネ